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[06月17日] 魂を揺さぶる珠玉のヴァイオリン、樫本大進に聞き惚れる [音楽と感動]

[06月17日] 魂を揺さぶる珠玉のヴァイオリン、樫本大進に聞き惚れる

まさか、これほどまで凄いとは思わなかった。耳を疑うばかりの素晴らしい音楽だ。
美しいだけ?違う。ホールを見上げる。彼の奏でる音は記憶にある音とは大違いだ。
かなりの入りの聴衆が全員、彼の出す音を一音たりとも聞き漏らすまいと聴き入る。

静まり返って彼の音を吸い取る。ベートーベンのロマンスの2番。お馴染みの曲だ。
それが違う。デリケートで気品があり、優雅でメリハリの利いた演奏だけとも違う。
常に念頭にあるのは脳の仕組みだ。心や魂も今や俎上の鯉だ。音の魔術を分析する。

何がこんなに惹き付けるのか?ガルネリの音色もある。ホール中によく鳴って通る。
大きな音量ではないが時折見せる低音は力があり、高音は折り目正しく澄んでいる。
つい先日、なぜ上達できないかと云うエッセーを書いたばかり。それが頭を過ぎる。

心に沁み入る音楽は芸術だ。演奏する方も聴く側も共に本能に根差した行動を取る。
聞こえるのは無意識に耳に入った音を処理するからだが意味を持つと積極的に聴く。
潜在脳が心や魂の本体で感情や意識を操作する。彼の音の気配りと思い遣りが判る。

コントロールされたフレージングの中に大袈裟でない洗練されたアゴーギグがある。
例えば、藪のどこかで、ホーホケキョと鳴く鶯の最初のホーは意外性で注意を引く。
さりげなく聞こえて準備させて置いて、ホケキョで勝負する。聞き逃しが出来ない。

緩急と強弱、特に美しい旋律の出だしでの僅かな揺らぎが聴く者を優しく包み込む。
感傷的な憂いのチャイコフスキーはロシアナショナル管弦楽団のバックとの対話だ。
音楽が万国共通語であると痛いほど再認識する。プレトニョフの指揮と表現がいい。

昨年、震災復興のため行なわれたアルゲリッヒとのシューマンの五重奏と大違いだ。
ベルリンフィルのコンマスになった経緯が頷ける。高い技量と国際人の感覚を持つ。
どこにも嫌味がないばかりか、クライスラーのリズム感とセンスすら感じてしまう。

全ての注意力が彼の出す艶やかな音色のヴァイオリンに向けられ、快感に報われる。
聴き終わって思い出しても何一つ嫌いな音や動きがないのだ。また聴きたいだけだ。
そのような演奏会は滅多に体験出来るものではない。本当に楽しめた演奏会だった。

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