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[10月09日#2] 勿体ない演奏会 [今日の日記・コメント]

[10月09日#2] 勿体ない演奏会

伏見のしらかわホールの演奏会に行く。久しぶりの室内楽だ。地元の愛知県芸大の催しだ。
ケルンの音楽大学のカンギーサー教授を招いて公開レッスンや多彩な音楽活動をする一環だ。
教授陣はそうそうたるメンバーだ。経歴はもとより実力派ばかりだからだ。天野教授は今年限り。

カ教授のチェロに加藤教授のピアノ伴奏で前半、シューマンのアダージョとアレグロから始まる。
この曲は私自身ヴィオラで何回かやっているから曲は熟知している。しかしチェロは初めて聴く。
あまりにも名曲でヴィオラばかりでなくオーボエやホルンなどでも演奏される。ピアノが美しい。

どうやら記憶にあるのはバシュメットのむせびなくヴィオラの音色だ。どうしても比べてしまう。
チェロは包み込むが、ヴィオラは鼻から脳天へ揺さぶる迫力が違う。やや響かないなと感じた。
続いてショパンのチェロソナタ。技巧的には難しいのに、やや地味に感じられる演奏。すごい。

そして休憩の後、チェロが2台のシューベルトの弦楽五重奏作品163だ。すごい顔ぶれだ。
V1白石禮子、V2桐山建志、Vla百武由紀、C1カンギーサー、そしてC2天野武子の諸先生方だ。
実は7月にオープンキャンパスがあり昨年に続いて参加したのだ。なかでも百武先生は恩師だ。

天野先生はサロンで何度も演奏を聞いて貰ったりカルテットの指導をして貰っているが素晴らしい。
過日シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」全曲を2回もやったこともありシューベルトは大好きだ。
お馴染みのメロデイが出てくる度にいちいち頷かされる。直前の誘導部がたまらなく魅力的だ。

アメリカで聖なる歌曲集というのを何冊か買い求めた。アメージンググレースや賛美歌の曲だ。
シューベルトはそのような曲を連想させる。それを楽器の音色を知り尽くしてちりばめて表す。
白石先生のヴァイオリンは絶品だが、全くカ教授のチェロにはただ感服する。弾いていない。

こちらから見ると横向きなので、端正な奏法にしか見えない。誰がソロを弾いているのかな。
よく見るといつもチェロなのだ。シューベルトはチェロの高音をヴァイオリン並みに多用する。
カ教授は全くさりげない風でそれをこなす。楽器が身体の一部でいながら力みを感じさせない。

それが隣の天野先生と中央の百武先生の絶妙なつなぎで歌い出すのだ。前半と違い鳴っている。
細身鍛えられた筋肉質の白石先生のヴァイオリンは繊細で優美ながらスピッカートは軽快だ。
隣の童顔の桐山先生はなんとなくユーモラスだ。なんとも多彩な個性だ。それが共鳴する。

ピアノの純正調とはまるで違い、完全五度の調和は脳をしびれさせながら心を癒してくれる。
だからシューベルトはハ長調を選んだのだと気が付く。チェロとヴィオラの開放弦が基調なのだ。
大曲なのにアンコールも。余韻を楽しむ長い静寂が見事な、いい聴衆に優しく上品な演奏会。

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